先輩移住者インタビュー
interview07
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埼玉県から地域おこし協力隊の制度を利用し、移住してきた大下さんは、任期中に市内の多くの地域に取材に行っていました。地域おこし協力隊としての活動をきっかけに、任期終了後に兼業ビデオグラファーに。地方での複業を実践する大下さんに、移住と地方での複業の感想を聞いてみます。
移住を考えた経緯と、かみのやまを選んだ理由を教えてください。
長年建築関連メーカーで働いていた私は、ドキュメンタリー映画に興味を持ったことがきっかけで、”人”や”社会活動”に関わりたいという思いを持ち、それからは情報を発信する仕事に携わってきました。その中で、埼玉県の地域新聞社での仕事を通じ、地域の方々を取材して交流し、情報を発信することの楽しさを知りました。地域の様々なことをより深く知ることができ、情報が市民のみなさんに役立ち、取材した方々には喜んでいただける、そういった仕事にやりがいを感じるのだと思います。私が執筆していた新聞は廃刊となってしまいましたが、同じようなことは続けたいと思い、首都圏に限らず地方でも仕事を探し始めました。移住について情報収集をしていた時に、地域おこし協力隊の制度を知り、上山市で映像記録推進事業という名目で募集を行っていたため、上山市への移住を考え始めました。
山形県には「山形国際ドキュメンタリー映画祭」に参加するために隔年で数回訪れていて、全く知らないところではなかったので、かみのやまへの移住には抵抗感はありませんでしたし、むしろ親近感がありました。また、JOIN(一般社団法人移住交流推進機構)が主催していた「移住・交流&地域おこしフェア」にも参加し、担当の市職員の方からお話をうかがえたことも、後押しになりました。
かみのやまの印象はどのようなものだったのでしょうか。
かみのやま温泉駅に初めて降り立った時、山々が目の前に広がり、山までの近さをまず感じました。特に蔵王連峰は雄大さが格別で強い印象が残りました。私の出身である埼玉県の南部では山が見えないので、地元では味わえない感覚でした。住んでみると、春には雪が残る蔵王連峰と桜、秋には冠雪した蔵王連峰と紅葉を一緒に見ることができるとわかり、北国らしく素晴らしい景色だと思いました。
私は移住前から自動車を持っていたので、かみのやまでの生活はかなり快適なものでした。山形市にも近く、自動車さえあればすぐ行くことができて便利です。市内にもスーパーやドラッグストア、全国チェーンのお店などが思った以上にあって驚きました。市街地から離れれば、山や田んぼ、果樹園などの、のどかな風景が広がります。程よく田舎で住みやすそうな印象を持ちました。
移住を決める際に大変だったことや心配だったことはありましたか。
仕事の面でいうと、地域おこし協力隊任期終了後については、とても心配していた点でした。取材ができる仕事やクリエイター職は地方ではあまり無いイメージがありました。将来的なことを考え地方に行かず安定した仕事に就いた方がいいのではと迷いましたが、地域おこし協力隊として移住し3年間の貴重な体験をするのは、年齢的にラストチャンスではないかと思い一歩を踏み出しました。とても大きな決断だったと思います。
また、雪についても、実際生活していけるのか心配でした。移住の移動日であった3月末に山形県全域で雪の予報が出ていて、その時はかなり焦りました。私は当時埼玉県にいて、山形では3月末でも雪が降ることがわかっていなかったので、埼玉にいる感覚で、スタッドレスタイヤからノーマルタイヤに履き替えていました。急いでスタッドレスタイヤに戻してから移動しました。移住後に、かみのやまは山形県の中で積雪が少ないとわかって少し安心しました。昔に比べて雪の量が少なくなったと住民の方々からうかがいましたが、降る年はかなりの量が降るので、雪に対する備えをしておくことは大切だと思います。雪国ではないところから来た人にとっては、慣れるまでとても大変な時期になると思います。
現在の仕事は充実していますか。
現在、宿泊施設で仕事をしながら、映像制作を行う複業をしていますが、移住する前はまさか私が個人でクリエイターとして活動するとは全く思ってなくて。地域おこし協力隊当時から映像作品を作り、地域の方々が観てくださって、お仕事をいただいたことは、個人で活動するきっかけになったと思います。地域の方とのつながりから、起業というチャレンジが始まりました。
映像制作はカメラやドローンを使って撮影し、編集までを行っています。協力隊の任期が終わり2年半経った今でも、当時のつながりや作品からお仕事をくださる方がいらっしゃいます。地域おこし協力隊として着任していた当時、市役所の職員紹介動画を制作することがありました。上山市公式YouTubeチャンネルにアップされている、その動画を観た市内の事業者さんから、同じような動画を作ってほしいとご依頼をいただいた時はとてもうれしかったです。現状、映像制作だけでは生活がなかなか難しいですが、楽しく活動させていただいています。これからも地域の方々や今まで出会ってきた方々との関係を大切に、仕事をしていきたいと思います。
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上山市公式チャンネル「ござってぇTV」(Youtubeへ)
かみのやまの魅力はどんなところにあるのでしょう。
かみのやまの魅力はたくさんありますが、特に近年は街なかに活気が出てきたところでしょうか。私が5年半前に移住して少し経った頃に「NPO法人かみのやまランドバンク」が設立されました。「かみのやまを盛り上げたい」という思いを持つみなさんの活動やサポートもあって、5年半の間で、空き地の活用や、空き店舗をリニューアルしてかみのやま温泉駅前や新湯温泉街、上山城周辺で新店舗が多く開店しました。今では、月に1回くらいのペースでマルシェなども行われていて、毎週、市内のどこかでイベントがある印象です。私もイベントに映像制作や消費者の立場として参加しますが、市内だけではなく県内様々な地域から出店して、多くの方が集まり賑わっています。市民として、自分が住んでいる街が良い方向に変化していくのはワクワク感があって面白いですし、身近に感じられることはいいですよね。
また、移住・定住ということを考えると、ご縁というものはとても大切だと思っています。地域おこし協力隊という立場で3年間活動できたことは、多くの市民の方々と出会い、自分の存在を知っていただくきっかけになったので、かみのやまでの生活に溶け込みやすかったのではないかと思います。協力隊の任期が終わってから2年半も経ちますが、様々な方から今も声をかけていただいてお話できることがとてもうれしく、本当に温かい人が多いと思います。そういったご縁が非常に魅力的なところが、今も定住している理由の一つです。
移住を考えている人にアドバイスはありますか。
まずは、私が山形県に何回か来ていたように、2月に行われる「加勢鳥」や5月の「山形ワインバル」などの大きなイベントに観光目的で来てみるのはいかがでしょうか。山形県に、上山市に住んでみたいと思ってもなかなか、一歩が踏み出せないと思います。はじめから移住と考えるとハードルが高いと思うので、観光をすることで街の雰囲気を感じ、さらに興味を持っていただければ、移住・就労体験として、イベントの運営補助や短期間のトラベルバイトに参加してみることもいいのではないかと思います。特に季節を変えて複数回来ていただくと、四季の様子や街の変化なども知ることができるので、おすすめです。
また、自動車のない生活は私の中ではイメージがつかなくて、可能であれば、自動車を用意していただいた方が、移動がしやすくやはり快適に過ごせると思います。かみのやま温泉駅周辺に住めば、本数は多いとは言えないですが電車やバスもありますし、スーパーも徒歩圏内にあるので、自動車がなくても生活しづらいことはないと思います。