先輩移住者インタビュー
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大阪生まれ。フランスで醸造技術を習得し、さらには岡山県にてワイナリーの立ち上げにも関わった片寄さん。2年前からかみのやまに移住し、今はワイン用ぶどうの栽培と委託醸造によるワイン作りに励まれています。なぜ、かみのやまを選ばれたのか? その思いについて聞いてみる。
移住を考えた経緯と、かみのやまを選んだ理由を教えてください。
農業がしたいという思いと、その副産物であるワインの知識を得て、それを日本に伝えたいという気持ちから渡仏し、ワイン醸造に関わる術を学んで来た私は、帰国後に岡山のワイナリー立ち上げに関わりました。そこでは他にワイン用ブドウ栽培の技術、醸造の技術を持っている方はいなかったのである程度は自由に働かせていただいていたのですが、いつも心のどこかに自分自身が造りたいワインなのかという疑問がありあました。フランスの中でも、どちらかと言えば北のエリアにいた私としては、冷涼な土地のワインこそが理想で、いつかワイナリーが作れるならば東北でやりたいと思っていました。そんな時に、有名な醸造家さんが山形県の南陽市に移住して、ワイナリーを開設した話を耳にしたのです。
その方の移住の決め手は、山形県産ぶどうのデラウェアでした。年代的に、私も日本ワインにはいくらかの疑問を持って育った世代。私が渡仏した2000年前半では、ワイン用品種で造っていない日本ワインは、ワインでは無いという話がヨーロッパでは当然でしたし、私自身もそう思っていました。でも、ワインを学んで日本に帰国し、国産ワインを飲んでみた中で、一番美味しかったのが、デラウェアのワインだったのです。特に山形産、かみのやま・置賜のものが、酸味が極まっていて、私がワインを学んで来たシャンパーニュ地方のそれと似ていたのです。それまではおおまかに山形県としか知らなかったのですが、いろいろと調べる中でかみのやまのことを知り、ぶどうが盛んな地域ならと移住先として決めました。僕を含めて家族5人での移住でしたが、みんな僕の考えに納得してくれたのはありがたかったですね。
実際に移住してみての感想を教えてください。
自分にとって大事なのはデラウェアの産地であることで、山形県で言えば元々は置賜を中心に移住先を探していました。苗から植えてもぶどうを収穫するまで数年かかるので、成木のぶどう畑を安く借りられる環境があるか無いかも重要でした。もちろん、ぶどう園をはじめから作るという考えもありましたが、その為に土地を新たに切り拓いて、その場所の環境を崩したくはありませんでした。だから、自分としては願った通りの土地ですし、家族もひとつ前に住んでいた岡山県よりも、かみのやまのことが好きなようです。駅から少しだけ離れた地区に住んでいますが、子ども達も自転車で、思い思いに街を楽しんでくれていますし、僕も時々自転車を借りては市街地を散歩したりしています。
住み始めて大変なことはありますか。
どこに引っ越しても同じだろうと思いますが、人間関係を構築すること、また仕事のやり方を決めることは大変でした。私の場合、ワイン用ぶどうの栽培や醸造について、他で培ってきた経験はありましたが、かみのやまに来たのだからここでのやり方に合わせないといけない。その空気感を掴むのは難しいし、個人事業主としては収入のこと、また親としては家族のことも考えないといけない。考えることがあまりに多すぎて、脳疲労は正直大きいですが、農作業はその疲労を消してくれます。かつ、移り行く自然を感じながらの散歩や、新たな知識を得るための読書を習慣化したことは、心の安定にも繋がっているようです。
かみのやまの魅力はどんなところにあるのでしょう。
ぶどうを求めて移住してきた私としては、かみのやまの魅力と言われると、正直分からない部分がまだ多いです。ただ、ぶどうを育てて、ワインを作りたいと思う私にとっては、これだけ果樹栽培の環境に凄く恵まれています。それに、こちらから心を開けば、どんなに歳の差があっても仲間として迎え入れてくれる人が多いことも、嬉しいです。私はいずれこの街にワイナリーを作りたいし、気候だとかいろんな条件を含めて、私にとってはこの街を選んだことは正解だったと考えています。今までいろんな土地で過ごしてきましたが、ここは本当に住み良い街ですよ。
かみのやまへの移住を考えている方へ、先輩としてのアドバイスをいただけますか。
旅は嫌いだけど、人生の大半を旅するように過ごしてきた私としては、どうせ日本だし、マクロで見たらどうせ同じ地球上なのだから、どこでも生きていけるから心配しなくていいと思います。誰だって国、県、市で線を引きたいという思いがあるけど、誰もが生きたい場所で生きる権利はあります。だから、住んでみたいなら、とりあえず住んでみればいいと思います。後は何を仕事にするかで、どうしても収入を得る術は大切ですので、それをどこに求めるかでも変わるのだと思います。私は農業とワイン作りに携わりながらそれができていますが、そういった計画を立てるのは、移住するにしても、また普段の生活にしても、とても大切なことなのでは無いでしょうか。