Spotlight
posted2023.11.09
地元愛が、過去から現在、未来を結ぶ地域プロジェクト
城下町・温泉町・宿場町の三つの顔をあわせ持つ歴史情緒ある上山市。文化財に指定された茅葺屋根の歴史的建造物が9棟あります。まちにとって欠かすことのできない魅力の一つであると同時に誇りでもあります。
この茅葺屋根の保存・管理は決して容易なことではありません。現代では、知識と経験を持つ茅葺職人が数少なくなった上、素材となる茅の確保や購入に必要な費用も大きな負担となっています。
そこで市は、地元の「羽州街道『楢下宿』研究会」のみなさんとともに、平成28年度より地域の耕作放棄地を茅場に再生させて活用し、現在に遺す貴重な茅葺文化を伝承する「かみのやま草屋根プロジェクト」を進めています。
楢下地内に再生した2カ所の茅場では、毎年春と秋の下草刈り、11月に茅刈りを実施。地域住民をはじめ、活動に賛同する小学生や大学生、茅葺職人なども参加し、活動の輪が広がっています。この取組は各方面から評価され、これまで「輝く県民活躍大賞・一般社会貢献部門」や「やまがた景観賞・山形経済同友会奨励賞」などを受賞しました。
楢下地区では、古民家を活用したカフェや地元食材を使ったランチのおもてなしなど、積極的な地域活動に取り組み、地域ならではの特長をつくっています。
「地域のために自分たちでできることは、自分たちでやろう」――。
地区のみなさんの地元愛が、草屋根プロジェクトの成功にもつながっています。
刈り取られた茅は、楢下宿のほか市内にある古民家の茅葺屋根修繕に使用される以外に、余剰分を市外へ出荷。地区民は、「年々、質の良い茅が育っている。楢下宿の茅をブランドにして、様々なところで使ってもらえればうれしい」と目を細めます。
茅葺は往時の生活文化を今に伝え続け、観る人の心を癒しています。かみのやまへお越しの際は、ぜひ市内の茅葺家屋を巡り、その歴史と地区のみなさんの愛に思いを馳せてみてください。