人をつなぎ、まちを動かしていく。そんな人でありたいです。

#012

IMAGINE-今人-

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人をつなぎ、まちを動かしていく。そんな人でありたいです。

渡部大陸さん(Riku Watanabe/印刷会社勤務・コミュニティデザイナー

高校最後の冬、コロナ禍の静まり返ったまちを見たことをきっかけに、まちづくりに関心を持った渡部大陸(りく)さん。大学在学中は“コト”のデザインを学び、若者が地域とつながることができるプロジェクトをスタート。社会人となった今も、若い世代が活躍できるかみのやまを目指して動き続けています。

りく

まちづくりに関わるきっかけは

2020年の冬に見たかみのやま温泉駅前は、怖いほど静かでした。世の中はコロナ禍でステイホームが叫ばれ、観光客はもちろん市民の姿もなく、まちの体温が下がっているのを肌で感じましたね。当時、高校3年生だった僕も、何とも言い難い閉塞感がありましたが、次第に「何か自分ができることはないか」と考えるようになりました。 自分が変わるきっかけになるかもしれないと、以前、新聞で見たことのあった、空き家の利活用で地域の再生などを手がけている団体『かみのやまランドバンク』に、思い切って連絡しました。それからは、市内の空き地を整備して広場にしたり、駅前の空き店舗のリノベーションに参加したりと、少しずつ「まちづくり」に携わらせてもらったのです。その経験から、実際に手を動かして人が動けば、まちも動き出すということが分かりました。

大学では何を学んだのでしょうか

もっと、まちづくりを学びたいと思い、東北芸術工科大学に進学しました。 僕が選んだコミュニティデザイン学科は、絵画や写真、オブジェなど、“モノ”をアウトプットするのではなく、形のない“コト”をデザインします。なかなかイメージがつきにくいかもしれませんが、コミュニティデザインとは、地域住民や企業と協働し、課題解決のための活動を企画・デザインすることです。そのために必要なスキルであるコミュニケーションや、ファシリテーション、ワークショップデザイン、プランニングなどを地域の中に入りながら実践して学んでいきました。

なかでも、鶴岡市の湯田川温泉での実習は印象深いものでした。約1年半にわたり、毎月2回現地を訪れ、地域住民のみなさんとともに、地域の未来について話し合いを重ねました。そして、地域課題の発見からその解決方法の企画、さらに実践するところまでを一緒に取り組みました。こうしたプロセスを通して、地域の人々が自ら課題を見つけ、解決へと進んでいけるようにするための伴走支援についても学びました。

この“コト”のデザインの難しさは、短期間で結果が出にくい点です。まちづくりは、5年、10年という長期的なビジョンで取り組むもので、今すぐ結果を目にすることができないもどかしさはありますが、同時に地域との信頼関係がいかに大事か、継続しなければまちは動かないということをあらためて学ぶことができたと思っています。

実習を終え、なぜ、僕自身まちづくりの魅力にひかれたのだろうとあらためて振り返った時に、それは人との出会いがもたらしてくれたことだと気づきました。地域には、様々な技能や趣味などを持ったバラエティに富んだたくさんの人がいます。そのような人々とつながることで、人を通じて地域の魅力を知ることができる。これが不思議で楽しいですよね。全ては人が起点になるのだから、人と簡単につながれるような仕組みを考えれば、まちづくりに何かしらの化学反応が生まれるのではないかと仮説を立てました。

そこで始めたのが、「街んぐガチャ」です。
ガチャを引いて、地域の人に会いに行こうというこの企画は、かみのやまを巡りながら、人に会いに行くことができる仕組みです。2024年の5月から12月頃まで実施しましたが、「人に会いに行く観光は新鮮だね」という声をいただきました。一方、初期段階では許可取りが不十分で、注意を受けたこともありました。それからは、説明や同意などを先に整えるようにしています。 また、『かみのやま若者つながらナイト』という若者同士が気軽に交流できる場づくりも始めました。

「かみのやま若者つながらナイト」とはどんな集まりなのでしょうか

若い世代で集まることができる場です。
僕自身がそうでしたが、何かやりたいけどやれなくてモヤモヤしている若い世代が、かみのやまには多いと感じていました。だから、このまちでなにかをやってみたいという若い世代が集まれるよう、地域おこし協力隊の知人や、地元の高校生と一緒に立ち上げ、毎週金曜日に開催してきました。参加した方が友達を誘うなどして、つながりの輪が徐々に広がっていると思います。

はじめて半年くらいですが、現在は高校生と社会人が半々の割合で、のべ30人くらいが参加してくれています。「居場所ができた」と話す高校生もいて、同世代だからこそ話し合えることがあるから、新しいコミュニティになりそうです。 しかし、参加者の固定化という課題も見えています。

学校を卒業し、社会人としての道を歩みはじめるなど、ライフステージに影響されることは仕方がありません。でも、若い世代が集まることができる場は、地域に根付いていくことにこそ意味があると思います。核となるメンバーは絶えず増やしていきたいですから、どんどん若い世代から関わってもらいたいですね。そのためにも、初めて参加する人たちのハードルを下げられるかは重要で、まちづくりを意識しないような、気軽に参加しやすい場づくりもこれから企画して取り組んでみたいと考えています。

「かみのやま若者つながらナイト」は、種まきだと考えています。若い世代が集い、つながい、まちについて考えて、意見を重ねる。そうすれば、大人になったとき、このまちで活躍できる、もしくはしようと行動する人が出てくるかもしれない。 そんなサイクルをつくって地域の大人とも連携し、年齢の縦軸と横軸でつながりながら、なにか“コト”が自然発生的に生まれるまちになってくれたらいいですね。

かみのやまはいろんな要素がギュッと集まっているように思うのですが、コンパクトなまちだからこそ、他地域よりも実現できる可能性が高いのではないかと感じています。

らためて、大陸さんにとってのかみのやまとは

自分にとっての居場所です。同じ時間を過ごせたり相談できたり、自分にとって心強い人がたくさんいる。一緒に面白いことをしようと声をかけてくれる人も多いですから。

僕の夢は、コトとモノの両方からアプローチできる、地域に特化したデザイナーになることです。大学で学んできたコミュニティデザインに加え、現在仕事で実務として取り組んでいるグラフィックデザインなどの経験も活かしながら、将来的には地域に対して「コト」と「モノ」の両面から関わっていきたいと考えています。

まずは、コトのデザインをベースにしながら、地域のために行動を起こそうとするための仕組みづくりをしていきたい。いつかは〝まちの動き〟のはじめの一歩を設計し、人をつなぎ、小さく試して広げる。その役割を、このまちで担っていきたいですね。

かみのやま若者つながらナイトinstagramhttps://www.instagram.com/kaminoyama_youth_night/
 

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